小説を読むとき、わたしたちはしばしば想像力を膨らませる。目の前に広がる風景を思い浮かべたり、登場人物の気持ちに感情移入してみたり。
そんなさまざまな描写の中で、「食べもの」に注目して作品を語る漫画、それが『ハラヘリ読書』だ。
本作は、古今東西の名作に登場する美味しそうな食べものを作者・宮田ナノさん独自の目線で語るコミックエッセイ。
わたしが宮田さんの作品を読むのはこれで2作目。最初に手に取った『もしもし、こちらは夜です』がたいへん好みだったので、続けてこちらを購入した。
- 森茉莉の書く“シュウクリイム”
- 内田百けんの書く“おかうこ”
- 村上春樹の書く“オムレツ”
- 森見登美彦の書く“お酒”
- etc……
作家たちが独自の視点で描く食べものたちは時に美しく、時に涎を誘う……小説や随筆のエピソードをユーモラスに紹介しつつ、そこに登場する食べものに想いを馳せる。
この作品の魅力はなんと言っても、宮田さんの描く作家たちがとても生き生きしていること。
本作では近代作家も多く取り上げられているのだが、現代小説を好んで読んでいるわたしにとって、近代の作品は少々とっつきにくさを感じていた。何となく難しそう……みたいな。
しかし、『ハラヘリ読書』に登場する近代の作家たちを見るとそんな苦手意識はどこかへ行ってしまう。
宮田さんの視点から血の通った人間として丁寧に描かれている彼らは、とても身近に感じることができるのだ。
特徴をしっかり捉えつつかわいくデフォルメされた作家たちの姿が愛おしいのも、その要因の1つだろう。
これを機に、近代作家の作品に手を出してみようかしら。自然とそう思えてしまう力がこの漫画にはある。
この作品がこんなにも読者を引き込む理由の1つに、作者である宮田さんの作品への愛の大きさがあると感じる。
宮田さんの読書への取り組み方として、たくさんの冊数を読むのではなく、好きな作品を何度も繰り返し読むそうだ。
確かに、どのエピソードも作家や作品への強烈な愛があってこその熱量を感じる。
わたしも一応読書が趣味と公言している身なのだが、恥ずかしながら内容をあまり記憶できていない。その上、読むならば未読のものという固定観念に縛られているところがあって、再読の優先度は低くなりがちだ。
『ハラヘリ読書』は、そんなわたしの読書への思い込みも打ち砕いてくれた。
たくさん読むだけが読書じゃない。好きな作品をこれだけの濃度で語れたら、こんなに素敵なことはないじゃないか。
わたしも宮田さんのように、本を味わい尽くしたい。そして、お気に入りの作品を愛を持って語りたい。
食の描写に注目してみること、近代小説にも挑戦してみること、そしてお気に入りの作品は何度読んでもいいということ。これからのわたしの読書ライフが、『ハラヘリ読書』のおかげで一気に華やいだ。
まずはこの中で取り上げられている作品から、手にとってみようと思う。

